オピニオンコラムcolumn
春夏は血糖値の急なアップ・ダウンが起こりやすい
春夏は血糖値スパイクが大きくなりやすい季節です。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後に急降下する現象で、近年注目されるようになってきました。「血糖値」は私たちの体内を流れる血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度のことで、高すぎても低すぎても、私たちの身体に様々な不具合をもたらすのです。春は異動や歓送迎会、引っ越しなどの環境変化によるストレスが増え、夏は糖質の多い清涼飲料水や冷たい麺類などに食生活が偏りがちで、気づかないうちに食後高血糖を繰り返してしまう危険性があります。何かしらの対策を講じることが大切です。
エクストラバージンオリーブオイルが、血糖値スパイクを抑制!
そこで、日常的に食卓にのることの多いパンを食べたときに、エクストラバージンオリーブオイルがもたらす血糖値の変化を測定し、検証を行いました。その結果、食パンだけで食べるよりもエクストラバージンオリーブオイルと一緒に摂取したほうが血糖値の上昇も下降も有意にゆるやかになり、血糖値スパイクを抑制できることがわかりました。
※EXV:エクストラバージンの略
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- ①食パンのみ
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- ②食パン(焼きなし)+
EXVオリーブオイル+食塩
- ②食パン(焼きなし)+
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- ③食パン(焼きあり)+
EXVオリーブオイル+食塩
- ③食パン(焼きあり)+
パンのみを食べた場合には、食後30分で血糖値が急上昇し、その後急降下する血糖値スパイクの状態がみられました。中には、180分後の血糖値が58という低血糖状態にまで下がる方もいました。このようなケースでは、血糖値スパイクによる血管ダメージが起こるとともに、過剰なインスリンの分泌で肥満リスクも高まっています。一方、パンにエクストラバージンオリーブオイルをつけることによって、パンを焼く・焼かないに関わらず、食後の血糖値スパイクが穏やかに推移し、適正な血糖値内におさまりました。
今回の実験で、パンに何もつけずに食べると血糖値が急上昇&急降下する血糖値スパイクに陥りがちであることが裏付けられたといえます。
血糖値スパイクで、血管も見た目も老化する
適正な血糖値は空腹時60~110㎎/dl、食後100~140mg/dlと言われ、食後の血糖値が140㎎/dlを超えるのが食後高血糖です。食後に血糖値が上昇すると膵臓から分泌されるインスリンの働きで血糖値は正常に保たれますが、インスリンには脂肪細胞に中性脂肪を溜め込む働きもあるため、食後高血糖でインスリンが過剰に分泌されると肥満の原因にもなります。さらには、食後高血糖は、がんや認知症のリスクを高めるという研究結果もあるのです。また、急激な血糖値の上昇・下降は有害物質である活性酸素を発生させ、血管内皮細胞を傷つけ血管を老化させて、動脈硬化を招きます。病気だけではありません。シミ、シワ、白髪など見た目の老化にもつながっていきます。
エクストラバージンオリーブオイルのアンチエイジング効果に期待
エクストラバージンオリーブオイルをつけたパンが血糖値スパイクを防ぐことができたのは、糖の吸収がゆるやかになったためと考えられます。オリーブオイルは、摂取した食べ物が胃から排出する時間を遅らせる効果が知られています。
また、エクストラバージンオリーブオイルには血液中の悪玉コレステロールを下げる効果のあるオレイン酸が含まれます。さらにポリフェノール類やビタミンE、βカロテンなどの様々な抗酸化物質が含まれるので、アンチエイジング効果も期待できます。
“ブレッド&オリーブオイル”生活で食後高血糖を防ぎ、若々しい血管と健康を手に入れましょう!
<プロトコル>
- 対象者:
- 血糖値などの異常のない健康な男女7名(20代~50代)
- 実験期間:
- 2019年3月11日(月)~19日(火)
- 対象食材:
- ①食パンのみ(焼きなし)、
②食パン(焼きなし)+エクストラバージンオリーブオイル(24cc:大さじ2杯)+食塩2つまみ、
③食パン(焼きあり)+エクストラオリーブオイル(24cc:大さじ2杯)+食塩2つまみ
※油脂の分量との関係を考えて、食パンは4枚切りとする - 実験方法:
- 10時間絶食した後(水のみ摂取可)にそれぞれの条件のパンを食べてもらい、血糖値の変化を測定(3日間)。
・摂取後30分毎に、180分まで血糖値を測定。
・測定中は運動等を避け、外出は禁止。
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池谷 敏郎 先生医療法人社団 池谷医院 院長/
東京医科大学客員講師総合内科専門医、循環器専門医。1988年、東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。 1997年、池谷医院理事長兼院長に就任。心臓、血管、血液のエキスパート。著書に、「血管がぐんぐん若返る!! 豆乳オリーブオイル」など多数。